こんにちは、電波太郎です。
携帯電話の通話が途切れたり通話ができなくなってしまう原因に、「干渉」や「弱電」があります。私たちは、それらの通話障害を解決する「指向性アンテナ」を開発してきました。
これまでの実験で、指向性が鋭いアンテナは基地局が見通せる場所では性能を充分に発揮し、「干渉」「弱電」においても効果を確認できました。
しかし、基地局が見通せないビルの谷間などのような環境においては、充分な性能を確認するに至りませんでした。
鋭い指向性を持った高利得アンテナの評価をまとめると、
◎ 良い点
・ 基地局が見通せる環境では、アンテナを基地局に向けることによって、最大受信利得が得られる。
・ アンテナの指向方向以外からの干渉波を受けないため、Ec/Noが向上する(電波の質が良くなる)。
△改善点
・ 基地局が見通せない環境では、電波は建物などに反射して届いているために、結果として電波の到来方向が複数存在することになります。そのため、指向性の鋭いアンテナでは、アンテナの方向調整が難しく、受信利得も得にくくなります。
電波太郎:
こんにちは、基地局が見通せない反射波の環境でも、もっと受信感度の良いアンテナを作るんですね。
開発担当:
基地局が見通せない環境では、アンテナの受信感度(利得)を上げるだけではダメなんですよ。それは、基地局が見通せる場所だと基地局方向に正確にアンテナを向ければ指向性による利得が得られますが、反射して複数方向から飛来するような電波は上手く受信できないからなんですね。
電波太郎:
乱反射した電波を効率よく受信できるようなアンテナとは、何ですか?
開発担当:
基地局が見通せる環境では「パッシブ・リピート・アンテナ」の効果を確認することができました。
しかし、基地局が見通せないところでは、ビルなどの影響で電波が乱反射を起こし、RSCPとEc/Noが最大となる方向を探すのが非常に困難でした。
またそのような乱反射した環境での電波は、予想外の方向からも飛来していたりもしました。
そのため、乱反射した電波を効率よく受信できるようなタイプのアンテナも必要と思い、テストしてみたんですね。
開発担当:
基地局が見通せないところは、基地局から出た電波はどこかで廻り込んで来ています。
廻り込んでくる電波は建物などに当たって反射することで、電波が振動する方向が変わってしまいます。(偏波※といわれる)
つまり、乱反射した電波を効率よく受信できるタイプのアンテナとは、このような電波受信をスムーズに行えるアンテナのことです。
※ 偏波・・・電波が特定の方向に振動している状態のことをいい、電波が地面に対して垂直方向に振動している場合を「垂直偏波」水平方向に振動している場合を「水平偏波」という。
(携帯電話の電波は垂直偏波)
開発担当:
偏波方向が変わるということは、基地局から出た垂直偏波が建物に反射したあとは垂直でなく斜めに傾いて伝わっていくことです。
携帯電話の基地局から放射される電波は、垂直偏波なので「パッシブ・リピート・アンテナ」も垂直偏波アンテナとなっています。
一般的にアンテナの性能を最大化するためには、電波の到来方向にアンテナを合わせるだけでなく、偏波面も合わせる必要があります。
偏波面にあわせて入射アンテナを傾ければいいのでしょうが、実際には傾きなどが一定しておらず、合わせるのは困難だといえます。
開発担当:
そこで、偏波の方向が変わっても感度が落ちないアンテナを検討ました。つまり、偏波に合わせてアンテナの角度を変えて調整するのではなく、垂直偏波であっても水平偏波であっても(どのような偏波角度であっても)受信感度の変動幅が少ないアンテナを開発できないか、ということです。
【写真1】偏波ダイバーシティアンテナ※
※ 偏波ダイバーシティ・・・基地局から出た電波はビルなどに反射し様々な経路を通る為、垂直偏波でなく傾きをもった電波となります。偏波ダイバーシティはこの傾いた偏波に対応するものとして試作しました。
◆偏波が傾くと、どれだけ電波強度が変わるか実験をしてみました。
【図1】偏波面を45°と90°傾けて実験
【使用測定機】Hewlett-Packard スペクトラムアナライザー HP8596E
◆偏波が傾くとどれだけ電波強度が変わるか実験を行いました。
出力アンテナより2000MHz(2GHz)の基準電波を発信し、試作した平面アンテナを接続して3パターンの受信利得を測定しました。3パターンはそれぞれ、(1)アンテナを垂直、(2)45°傾けた状態、(3)90°傾けた状態です。
その結果、アンテナを45°傾けた場合は4.22dB低下し、90°傾けた場合は14.38dB受信利得が低下しました。つまり偏波面が45°傾いた電波の場合、従来のアンテナで受信すると4.22dBもの受信感度ロスが出ることになります。
偏波面の角度による差は、最大で14.38dBとなり、偏波角度により大きな性能の差が生じるということがわかりました。「パッシブ・アンテナ」にとって偏波環境では、このロスの極小化がポイントとなります。
次に、偏波ダイバーシティアンテナ【写真1】で受信し測定しました。
偏波面の方向に依存しない偏波ダイバーシティの場合、受信利得は5〜6dB前後に低下するものの(合成器のロスも含む)、偏波面の角度の変化によるレベル差が1dB以内に収まっていました。【表1】
測定結果
【表1】偏波ダイバーシティの効果
結果より基地局から送信された電波が建物などに反射し偏波の角度が変わってしまった場合にはすべての偏波方向に対応した偏波ダイバーシティアンテナが有効である事がわかりました。
次回のブログでは、偏波方向に依存しないアンテナを使用し、FOMAの電波をエリアテスタを使用し、その効果をレポートしたいと思います。お楽しみに!