電波感度をよくするケータイ・スポット・アンテナの開発Blog

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偏波ダイバーシティアンテでFOMAの電波を受信

2006.02.01

こんにちは、電波太郎です。
ビルの谷間など基地局が見通せない場所では、基地局から送信された電波が建物などに反射することで偏波の角度が変わってしまい、電波の強度も劣化します。前回の実験で偏波の角度が変わった場合、平面アンテナよりもすべての偏波方向に対応した「偏波ダイバーシティアンテナ」の方が有効であることがわかりました。
そこで今回は、「偏波ダイバーシティアンテナ」がFOMAの電波に対してどれぐらいの効果を発揮するのか、エリアテスター(アンリツML8720B)を使って実験を行いました。
 
実験場所は、基地局が見通せないビルとビルの間です。【写真1】
【写真1】ビルの谷間で携帯の電波を受信
 
まずは、現状の電波環境を測定してみました。
基地局は見通せないところですが、
希望波受信電力 (RSCP)は −82.36dBm、 Ec/Noは −7.3dB でした。【1-A】
 
【図1】電波環境と平面アンテナでの測定結果
 
次に、平面アンテナをそこに設置し、エリアテスターに接続して測定しました。
結果、平面アンテナで受信したRSCP値は−63.9dBmになり、18.5dB良くなりました。
【2-A】
 
【図2】アンテナの回転角度
 
次に、平面アンテナを45°傾けると−69.3dBmから−71.6dBmとアンテナが垂直の時に比べて7.7dB低下しました【2-B】
さらに90°傾けると、アンテナを垂直にした時と比べて14dB低下し(-63.9dB →-77.9dB )、Ec/Noも3dB低下(7.3dB →10.3dB)しました。【2-C】
 
【図3】偏波ダイバーシティアンテナでの測定結果
 
 続いて、「偏波ダイバーシティアンテナ」を実験しました。
「偏波ダイバーシティアンテナ」を垂直に設置した状態でのRSCPは−69.6dBで、測定機のアンテナで図った現状の値よりもRSCPは12.8dB向上しました。
またEc/Noも、−7.3dBから−5.7dBになり、1.6dB良くなりました。【3-A】
 
次に、「偏波ダイバーシティアンテナ」を45°傾けてみました。
すると、RSCP値が−68.7dBmになりました。
平面アンテナのときは45°傾けると7.7dB 悪くなりましたが、「偏波ダイバーシティアンテナ」では、そのような極端なRSCP値の変化は見られませんでした。【3-B】
 
さらに90°まで傾けると、アンテナが垂直の時に比べてRSCP は4.7dB低下しましたが、Ec/Noの値は大きく下がらずに維持できていました。【3-C】
 
今回の実験により
「偏波ダイバーシティアンテナ」は平面アンテナに比べて、電波の偏波方向のズレや、乱反射した電波に対して効率よく受信できることがわかりました。

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基地局が見通せない場所の電波(偏波)

2006.01.27

こんにちは、電波太郎です。
携帯電話の通話が途切れたり通話ができなくなってしまう原因に、「干渉」や「弱電」があります。私たちは、それらの通話障害を解決する「指向性アンテナ」を開発してきました。
これまでの実験で、指向性が鋭いアンテナは基地局が見通せる場所では性能を充分に発揮し、「干渉」「弱電」においても効果を確認できました。
しかし、基地局が見通せないビルの谷間などのような環境においては、充分な性能を確認するに至りませんでした。
 
鋭い指向性を持った高利得アンテナの評価をまとめると、
◎ 良い点
・ 基地局が見通せる環境では、アンテナを基地局に向けることによって、最大受信利得が得られる。
・ アンテナの指向方向以外からの干渉波を受けないため、Ec/Noが向上する(電波の質が良くなる)。
 
△改善点
・ 基地局が見通せない環境では、電波は建物などに反射して届いているために、結果として電波の到来方向が複数存在することになります。そのため、指向性の鋭いアンテナでは、アンテナの方向調整が難しく、受信利得も得にくくなります。
 
電波太郎:
こんにちは、基地局が見通せない反射波の環境でも、もっと受信感度の良いアンテナを作るんですね。
 
開発担当:
基地局が見通せない環境では、アンテナの受信感度(利得)を上げるだけではダメなんですよ。それは、基地局が見通せる場所だと基地局方向に正確にアンテナを向ければ指向性による利得が得られますが、反射して複数方向から飛来するような電波は上手く受信できないからなんですね。
 
電波太郎:
乱反射した電波を効率よく受信できるようなアンテナとは、何ですか?
 
開発担当:
基地局が見通せる環境では「パッシブ・リピート・アンテナ」の効果を確認することができました。
しかし、基地局が見通せないところでは、ビルなどの影響で電波が乱反射を起こし、RSCPとEc/Noが最大となる方向を探すのが非常に困難でした。
またそのような乱反射した環境での電波は、予想外の方向からも飛来していたりもしました。
 そのため、乱反射した電波を効率よく受信できるようなタイプのアンテナも必要と思い、テストしてみたんですね。
 
開発担当:
基地局が見通せないところは、基地局から出た電波はどこかで廻り込んで来ています。
廻り込んでくる電波は建物などに当たって反射することで、電波が振動する方向が変わってしまいます。(偏波※といわれる)
つまり、乱反射した電波を効率よく受信できるタイプのアンテナとは、このような電波受信をスムーズに行えるアンテナのことです。
 
※ 偏波・・・電波が特定の方向に振動している状態のことをいい、電波が地面に対して垂直方向に振動している場合を「垂直偏波」水平方向に振動している場合を「水平偏波」という。
(携帯電話の電波は垂直偏波)
 
開発担当:
偏波方向が変わるということは、基地局から出た垂直偏波が建物に反射したあとは垂直でなく斜めに傾いて伝わっていくことです。
携帯電話の基地局から放射される電波は、垂直偏波なので「パッシブ・リピート・アンテナ」も垂直偏波アンテナとなっています。
一般的にアンテナの性能を最大化するためには、電波の到来方向にアンテナを合わせるだけでなく、偏波面も合わせる必要があります。
偏波面にあわせて入射アンテナを傾ければいいのでしょうが、実際には傾きなどが一定しておらず、合わせるのは困難だといえます。
 
開発担当:
そこで、偏波の方向が変わっても感度が落ちないアンテナを検討ました。つまり、偏波に合わせてアンテナの角度を変えて調整するのではなく、垂直偏波であっても水平偏波であっても(どのような偏波角度であっても)受信感度の変動幅が少ないアンテナを開発できないか、ということです。
 
【写真1】偏波ダイバーシティアンテナ※
 
※ 偏波ダイバーシティ・・・基地局から出た電波はビルなどに反射し様々な経路を通る為、垂直偏波でなく傾きをもった電波となります。偏波ダイバーシティはこの傾いた偏波に対応するものとして試作しました。
 
◆偏波が傾くと、どれだけ電波強度が変わるか実験をしてみました。
 
【図1】偏波面を45°と90°傾けて実験
 
【使用測定機】Hewlett-Packard スペクトラムアナライザー HP8596E
 
◆偏波が傾くとどれだけ電波強度が変わるか実験を行いました。
出力アンテナより2000MHz(2GHz)の基準電波を発信し、試作した平面アンテナを接続して3パターンの受信利得を測定しました。3パターンはそれぞれ、(1)アンテナを垂直、(2)45°傾けた状態、(3)90°傾けた状態です。
その結果、アンテナを45°傾けた場合は4.22dB低下し、90°傾けた場合は14.38dB受信利得が低下しました。つまり偏波面が45°傾いた電波の場合、従来のアンテナで受信すると4.22dBもの受信感度ロスが出ることになります。
偏波面の角度による差は、最大で14.38dBとなり、偏波角度により大きな性能の差が生じるということがわかりました。「パッシブ・アンテナ」にとって偏波環境では、このロスの極小化がポイントとなります。
 
次に、偏波ダイバーシティアンテナ【写真1】で受信し測定しました。
偏波面の方向に依存しない偏波ダイバーシティの場合、受信利得は5〜6dB前後に低下するものの(合成器のロスも含む)、偏波面の角度の変化によるレベル差が1dB以内に収まっていました。【表1】
 
測定結果
【表1】偏波ダイバーシティの効果
 
結果より基地局から送信された電波が建物などに反射し偏波の角度が変わってしまった場合にはすべての偏波方向に対応した偏波ダイバーシティアンテナが有効である事がわかりました。
 
次回のブログでは、偏波方向に依存しないアンテナを使用し、FOMAの電波をエリアテスタを使用し、その効果をレポートしたいと思います。お楽しみに!

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干渉の場所での指向性アンテナ

2006.01.18

こんにちは、電波太郎です。
タワーマンションやオフィスビルなど干渉が原因でケータイが使えないことがあります。そのような電波環境で携帯電話の電波を効率よく受信するには、指向性を持ったアンテナが有効です。そこで、干渉の場所で指向性アンテナを実験してみました。
実験場所は2ケ所。「基地局が見通せる干渉」と、「基地局が見通せない干渉」の場所
です。
 
基地局が見通せる所では電波が到来する方向にアンテナを向けることができますが
見通せない場所では、電波がどの方向から到来するのかわかりません。
というわけで、「基地局が見通せる所」と「見通せない所」で、測定機を使わずに設置をした場合
と測定器を使って指向性アンテナの方向の調整した場合のアンテナ効果の違いをテスト
してみました。
 
【図1】実験した環境
【使用測定機】アンリツ エリアテスタML8720B
 
◆ 測定機を使った指向性アンテナの設置
 
まずは、エリアテスタで現状の状態を測定しました。希望波を含んで6波を受信していました。
【表1】(a)
次に、基地局が見通せる3階の窓際に試作した指向性アンテナを設置し目視でアンテナの方向を調節したところ、干渉波が3波なくなり、希望波のEc/Noの値が良くなりました。
【表1】(b)
 
最後は、測定機をアンテナに接続しアンテナの方向合わせを行いました。【表1(C)】
ある程度の方向調整は目視でできていましたが、測定器を見ながら向きを調整すると、Ec/Noが3dBも
(−9.7 → −6.7)良くなりました。
少しの方向調整で受信電波の質が大きく改善されることに驚きました。【表1】(C)
 
【表1】3階窓際の測定結果 (単位:dB)
 
【写真1】今回測定に使用したFOMA 平面アンテナ
 
次に、基地局が見通せない干渉の場所(8階の事務所)でテストを行いました。
この場所は、携帯電話を使用していると音が途切れたり、音質が悪くなるところです。
 
そこでまずエリアテスタで現状を測定してみました。【表2】(a)
次に、指向性アンテナを携帯に接続し、通話の品質とアンテナピクトをチェックしながら方向調整を行いました。そして方向が定まった後、エリアテスタを使って測定しました。【表2】(b)
最後は、エリアテスタをアンテナに接続して最良の方向を探しました。【表2】(c)
 
測定機を使わず通話音質を確認しながら行った場合でも、音質の劣化がなくなり安定しているように感じました。
 
【表2】8階事務所での測定結果
 
そこで、さらにエリアテスタを使用し最良の方向を探してみました。
エリアテスタを使わず調整した方向より更に45°くらい動かすと良い結果がでました。
Ec/No −11.3 → −9.0)
 
電波太郎:
なるほど、干渉のところで指向性アンテナの設置をするには、測定機は必須ですね。
 
開発担当:
測定機がなくても、おおよその電波到来方向にセットはできますが、干渉波をカットする指向性アンテナの特徴を引き出せないのではもったいないですね。
干渉の目安は、やっぱり測定機でわかるEc/Noだからね。
 
(a)基地局が見通せるところ(3階)     (b)基地局見通せないところ(8階)
【図2】見通し内と見通し外でのEc/No値比較
 
「基地局が見通せるところ」と「見通せないところ」、どちらの場所でも、指向性アンテナによってEc/Noは改善していましたが、希望波と干渉波のEc/Noの差は「見通せているところ」のほうが大きくなっていました。
 
電波太郎:
「基地局が見通せない場所」の干渉っていうのは、よりやっかいってことなんですね。
 
開発担当:
そのとおり。
私たちは、そんな環境でも性能を発揮できるアンテナの開発を目指してるんです。

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携帯電波の「干渉」とは

2006.01.12

「都市部に多い“干渉“による携帯電話の通話障害」。それを解消できるようなアンテナを実現することが私たちの大きなテーマです。今回は、そのアプローチをまとめました。
 
電波太郎:
携帯電話にとって干渉は電波の混信や遅延をもたらしたりして厄介な現象であることがわかりました。では、どのようにして干渉をなくすのですか?
 
開発担当:
いやいや、干渉そのものをなくすのは、携帯電話会社の基地局設計やエリア保守によってしかできないですよ。
干渉をなくすというより「ケータイを使うときに干渉の原因となるような電波をできるだけ受信しないよう通信に必要な電波のみを受信する」ようにして、通話の障害をなくしていこうということなんです。
基地局が多い都市部のタワービルやタワーマンションでは、通信している基地局以外に、他の基地局の電波が届いていたり、色々な建物などに反射した電波までも受信してしまい、それが干渉波となっていました。【図1】
 
【図1】干渉波と希望波
 
電波状態が良いというのは、希望波(通信に必要な電波)の受信レベルの割合が他の電波よりも多いことをいいます。これまでのブログで「Ec/No」という値です。
 
高層ビルの電波環境:
 
電波太郎:
ということは、干渉波を取らずに希望波をたくさん受信して、電波の質を良くするればいいんですね。希望波をたくさん受信できる「指向性アンテナ」で解決ができるって、前も言ってましたもんね。
開発担当:
そうそう、『指向性を持ったアンテナを基地局に向けて電波を良くする実験』も以前しましたね。受信方向をもったアンテナが必要で、携帯電話が通信する基地局へ向けて、希望波を受信し、かつ干渉波を受信しにくいアンテナを試作しました。
 
電波太郎:
指向性アンテナを基地局に向けることによって、通話の状態が良くなるんですね。
でも、携帯電話本体にもアンテナがついていますが、これは指向性アンテナとどう違うんですか?
 
開発担当:
携帯電話は持ち歩いて使用できるように作られているため、携帯電話基地局がどの方向にあっても、電波が送受信できるよう無指向性アンテナと呼ばれる360°の全方向性のアンテナが使われています。【図2】
そのため結果として、希望波だけでなく干渉波も受信してしまうんです。
また特定の方向からの電波を受信する力(電波を集める力)も弱いんです。
身近なものではラジカセなどについている棒状のアンテナも無指向性アンテナです。
 
【図2】無指向性アンテナの動作イメージ
 
一方、指向性アンテナは一つの方向へ対しての受信する力を高めます。
アンテナを向けた方向から来る必要な電波だけを受信するようにできるので、
より強い力の電波としてキャッチすることができるアンテナといえます。【図3】
身近なものでは、屋根の上にあるテレビのアンテナやBS放送のパラボラアンテナも指向性アンテナです。
でも、通信したい基地局にアンテナを向けないと、本来の性能が発揮しません。
 
【図3】指向性アンテナの動作イメージ
 
指向性アンテナの効果:
電波太郎:
指向性アンテナで干渉波を受信しにくくして、干渉による通話の障害が起きないようにできるんですか?
 
開発担当:
でも、ただ指向性をもっただけだと、まだまだ使えるアンテナじゃないんですよ、電波太郎君が高層階で使う事をイメージしてごらん?
 
電波太郎:
アンテナを携帯に接続・・・
アンテナを基地局に向ける・・・・・・・・・・・・
基地局?どこ?電波が飛んで来る方向だね△○◇☆(ブツブツ)・・・?
 
開発担当:
さて基地局はどこでしょう?
というわけで次回のブログで、電波太郎君がアンテナを使えるようにしてあげましょう。

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携帯電波の「干渉」とは

2006.01.06

こんにちは、電波太郎です。
これまで行った実験でタワーマンションやタワービルでは、電波の干渉が原因で携帯電話の通話ができなかったり、突然通話が切れたりすることを確認しました。
都市部に多くあるこの「干渉」問題に対処できるようなアンテナを作ることが、私たちの大きなテーマです。そこで、干渉に対するアンテナの対策を考えていきたいと思います。
 
電波太郎:
干渉って何?
 
開発担当:
これまでブログでは、見通しがよい高層階や丘陵地などでは、多数の基地局から電波が飛んできてしまい、アンテナピクトが「3本」であるにもかかわらず通話が突然切れたりするような現象をいいました。【図1】
 
【図1】遠方の基地局電波受信による干渉波のイメージ
 
電波太郎:
電波がたくさん飛んできているのになぜ良くないの?
 
開発担当:
携帯電話は限りある電波で、より多くの人が使えないといけません。そこで、離れた場所の基地局では、同じ電波を使用することになります。高層階のような場所では近くの基地局と遠くにある同じ電波が混信してしまいます。
 
電波太郎:
その混信が、通話が突然切れる原因になっているのですね。
 
開発担当:
その通りです。そして干渉にはもう一つの原因があります。
一つの電波が複数の経路から届いて受信してしまうことによる干渉です【図2】。電波は光と同じ速度飛んできますが高速に多くの情報をやり取りする携帯電話の場合は、電波の到達時間の影響も受けてしまいます。反射した電波は直接届いた電波と混ざり合って結果として干渉の原因になってしまいます。
実際には、電波があちらこちらで反射して5つ以上の電波を受信してしまうのが現状です。
 
【図2】電波の反射による干渉イメージ
 
電波太郎:
ということは、広い講堂でなどで大声で話した時に音が反響して声が聞きづらくなる現象に似ていますよね。
 
開発担当:
体感的にはそんな感じです。干渉は、たくさんの人がそこで大声でしゃべっている感じかな。
 
電波太郎:
大雑把にまとめると、電波が混信したり反射して反響しているということですね。
で、今開発しているのは、そのような干渉による通話の障害が起きないような
アンテナを目指しているんですよね?
 
開発担当:
そうなんだ。
どのようにアプローチしていくかを、次回もう少し詳しくお伝えします。
お楽しみに!

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