電波感度をよくするケータイ・スポット・アンテナの開発Blog

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第3話「アンテナと市場をつなぐ」

2007.09.25

 第1話、第2話と藤井常務の話をもとに、ケータイ・スポット・アンテナの開発の立ち上げから商品化までを紐解きました。
 しかし、それは事業全体の大きな流れを提示したに過ぎません。商品化までのプロセスには、さまざまなフェーズが存在し、そのときどきでさまざまな部署・分野の人間が事業に関わっています。
 第3回目となる今回は、そのプロセスのなかで、マーケティング活動において重要な役割を果たしたインターネットからのアプローチにスポットライトを当てていきます。

ネットビジネスへの参入

 読者のなかには、前回までの話で特に印象的だったエピソードとして、「商品化までの2つの壁」というくだりを挙げられる方も多いのではないでしょうか。
 「商品化までの2つの壁」とは、「開発研究してひとつのプロトモデルを作り、そして市場に出せそうだなと到達するまでの壁と、実際にその製品が市場に受け入れられるまでの"商品"になる壁」のことです。なかでも、2つ目のマーケティングでの壁は「市場」という不確かな要素が対象となるため、一筋縄ではいきません。ケータイ・スポット・アンテナも、そうしたマーケティングのところで、大きな谷を感じていました。
 そうしたなか、市場との接点として大きな役割を果たしたのが、開発ブログです。その立ち上げにおいて、企画部分で動いたのが、eビジネス企画本部です。
「もともと当社にはインターネットによる収益モデルはありませんでした。でもその当時、携帯電話の流れが音声から通信へと動いていて、コンテンツというものが来だしていたんですね。当時、当社は携帯電話(ハード)の販売がメインでしたが、そのハードを活かす形でソフト(コンテンツ)側のものをできないかな、という思いがありました。加えて、ネットビジネスというものが浸透してきていた時期でもあり、弊社でも新たな事業の柱を持ちたいという思いもありました。そういう流れのなかでEコマースの企画へとつながり、携帯パーツのオンラインショップとして"ケータイどっとこむ"を立ち上げることになったんです。」と話すのは、eビジネス企画本部の松本本部長。

ケータイどっとこむ
【画像1】純正パーツや関連商品のオンラインショップ ケータイどっとこむ(http://www.k-tai.com/


そして、その立ち上げの企画とほぼ並行した形でケータイ・スポット・アンテナの開発が進められており、インターネットを通してユーザーと接点を持つという構想のもと、ブログの立ち上げが議論されるようになりました。
「Eコマースとは別に、当時ビジネスブログが出だしの頃で、私たちとしても、会社としてビジネスブログを採用してはどうかなと思い始めていたんです。つまり、それによって、ネットでのブランディングというか会社の取り組みがPRできるのではないかと思ったんです。
あと、アンテナ開発を進めていくなかで、当然のことながら販売や流通のことも考えていかないといけません。そういう意味で、市場のニーズを把握したいという思いがありました。つまり、弱電や圏外というのは誰もが経験することですが、果たしてどこまでの機能をアンテナに持たせればお客様に満足していただけるのかを知りたかったんですね。開発側の自己満足で終わらず、市場が求めている商品……その答えをブログを通してリサーチしていきたいという考えがありました」(松本本部長)。
 そうした会社としての思惑と商品化へ向けた課題克服への思いが合致し、開発プロセスを公開するという形で、「アンテナ開発ブログ」が立ち上がるにいたったのです。2005年10月のことです。
アンテナラボラトリー イメージ図
【図1】開発ブログ立ち上げ当時から名称を変更して続く「アンテナラボラトリー」では、図表を効果的に使い、電波不感の原因を分析しているほか、ケータイ・スポット・アンテナの実験プロセスも詳細に公開しています。

  しかし、前述したように、当社にはネットビジネスのノウハウはなく、当然のことながら、手探りのなかでのスタートとなりました。
「特に対策チームなどを作ったということではないのですが…色々勉強していくなかでわかったのは、ブログというのは要するに「個人日記」ということ。だから、そういうものを会社として提供するというところで、課題はありました。例えば、表現方法。会社で出す以上、トーンは守らなければいけないでしょうし、文末処理にも気を使いました。また、どうしても会社で出すとなると、発信したものに責任が出てきますよね。となると、コメントやトラックバックをいただくということに対して、その内容を判断する規約なども必要になってきます。だから、最初はそういう基本的なところで悩んだという感じです」(松本本部長)。

開発ブログのビジョン

 初めてのチャレンジであれば、当然ことながら、解決していかなければいけない懸案事項というものはいくつも出てきます。企画本部が最初に戸惑った会社としての責任という点もそうしたクリアすべき対象のひとつだといえるでしょう。
 ただし、そういった規約作りなどは、あくまでも最低限の環境整備だといえます。本当に大切なのは、立ち上げてからの方向性です。その辺りのビジョンについて、松本本部長はどのように考えていたのでしょうか。
「あの当時は3Gの携帯電話が出だしの頃で、3Gケータイは電波が入りにくい状態でした。そういう事実や改善への取り組みをうまく説明してあげる場所であれば、それだけでも、お客様に喜んでいただけるのではないかなと考えていました。まずはそこをしっかりと伝えていこうということが最初のビジョンでしたね。でも、正直続けていけるかな、という不安もあったんです。ブログというのは動きがないといけないですし、一回作って終わりでは意味がないですからね。でも、電波太郎が頑張ったおかげで(笑)順調に進んできていますよね。アクセスログを取っていても、専門用語から検索されていたりしますのでね。後、常務もおっしゃっていましたが、『感動しました。頑張ってください』というコメントもいただいたりして、すごく励まされましたね」(松本本部長)。

ブログによる機能訴求

 開発の過程をオープンにすることで読者からのリアクションを得るということは、「市場と接点を持つ」という意味で、非常に効果的であったといえます。
 加えて、松本本部長は、ユーザーとのタッチポイントの先にある販売という面でも、「開発ブログ」は機能していると分析しています。つまり、実験のプロセスを詳細にリポートすることで、ユーザーにとっては、アンテナの効果を購入前から確認することができるのです。
「大きなアドバンテージだと思います。認知度以外の面でも、オリジナル性の高い商品であればあるほど、商品を市場に出すときが難しいんです。つまり、お客さんは"買ったはいいけど、使えない商品だったらどうしよう"という心理を持つんですね。そりゃ見たことのない製品ですから当然です。でも、当社の室内アンテナに関しては開発の段階からすでに機能を告知できていたわけですからね。」(松本本部長)。
開発ブログと並行して開発が進められた室内アンテナ。
【写真1】開発ブログと並行して開発が進められた室内アンテナ。

 商品は、その製品の機能がユーザーにとってなにかしらのメリットをもたらすものでなければ、購買には結びつきません。しかし、その機能がいくら高度であっても、ユーザーに上手く訴求できなければ、商品として成立しません。
 そういう意味では、ケータイ・スポット・アンテナは、開発ブログによってはじめて"製品"から"商品"となったといっても過言ではありません。
「最初に言ったように、ブログは作って終わりではありません。開発ブログでは、これからも電波不感やアンテナに関して、お客様のお役に立てる情報を充実させていきます。また、それと連動して、ケータイどっとこむでも、お客様のニーズに応える商品ラインナップにしていきたいと考えています。これからも、どうぞご期待ください」(松本本部長)。

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