前回まで48階の超高層階で、FOMAを実際に使用しながら電波測定を行い、高層階独特の電波状態を把握しました。
高層階では見通しが良いために、多くの基地局の電波が届いてしまい、電波が干渉したり、到来した電波が部屋の奥では弱くなるなど、電波環境が悪くなっていることがわかりました。
基地局は、地上で最適に通信できるよう、アンテナを下向きに設定してあるため、高層階では電波が弱くなっていました。【図1】
また、障害となる建物がないので遠方の基地局からの電波や反射した電波も届いていました。
【図1】超高層ビルの電波状態
【図2】改善イメージ
パッシブ・リピート・アンテナを使って、このような状態を改善するため
1. 高利得の指向性アンテナを最勢力の電波が来ている基地局に向けて、
より強い電波として受信するようにする。【図2】
2. 室内のアンテナから再放射した電波レベルを他の干渉波よりも抜き立たせる。
3. 希望波を抜き出させることで
Ec/No値を向上させる【図3】
以上のポイントで、どれだけ電波環境の改善ができるものかを、実験してみました。
【図3】希望波を抜き出すことにより、
Ec/No値を向上
【テストの概要】
・基地局の見通せる48階の窓際に屋外用の指向性アンテナを設置。
・同軸ケーブルを使って再放射アンテナに接続。
・通路の奥へ向かって再放射。【図4】
・使用した携帯: FOMA N900iS P901iS
・測定機:アンリツW−CDMAエリアテスタ
【図4】窓際にて指向性アンテナで受信、屋内へ再放射
【アンテナ設置】
アンテナを設置した窓際の電波環境は
アンテナを設置してFOMA端末にて確認しました。
通話の途切れや通話の不安定感の解消は2m程度までは体感できましたが、2mを超えてしまうと、通話が不安定になりました。
再放射アンテナからの希望波と他の干渉波との
Ec/Noの差が少なくなり
結果としてアンテナの作用効果が弱まってしまう結果となっていました。【図5】
■アンテナのすぐそば
接続率 :発信100% 着信100%
アンテナピクト :3本
品質 :発着信がスムーズで通話の音質も安定していた。
RSCP:−73.8【dBm】 ←設置前−74.8【dBm】
Ec/No:−5.3(dB) ←設置前−8.4(dB)
■アンテナから1mのところ
接続率 :発信100% 着信100%
アンテナピクト :3本
品質 :発着信がスムーズで通話の音質も安定していた。
RSCP:−75.1【dBm】 ←設置前−77.4【dBm】
Ec/No:−6.4【dB】 ←設置前−8.5【dB】
■アンテナから2mのところ
接続率 :発信80% 着信100%
アンテナピクト :1〜2本
品質 :発信着信まで7〜10秒ぐらいかかり通話もできるが
効果をハッキリ体感できているというほどではなかった。
RSCP:−77.2【dBm】 ←設置前−77.2【dBm】
Ec/No:−7.8【dB】 ←設置前−8.5【dB】
■まとめ
今回は試作アンテナを使った実験で、電波干渉が起こっている高層階で、屋内の再放射アンテナから2mまでのところまで効果を確認できましたが、それ以上では元々飛来してきている電波とアンテナからの再放射電波の差がなくなり、干渉障害の改善には至らないという結果になりました。
この実験の結果から様々なデータが入手できました。
高層階の干渉を解決するためには、
設計におけるアンテナ性能、機能の向上とともに「
パッシブ・リピート・アンテナ」の“システム”としての対処が必要と捉えて現在、開発しております。
近々その試作が完成予定です。